スタインウェイ購入物語2「ヴィンテージスタインウェイ」

2023年08月14日

高級ピアノを導入したいと考えるようになってから私の興味はスタインウェイよりもファツィオリに向いていました。と言いますのも、当時の調律師の方からスタインウェイの優れた技術者たちがファツィオリに移りファツィオリがオススメというような話を聞いていたからです。私の教室はグランドピアノがギリギリ2台入る大きさを想定して作ったのですが(本当はもっと広く天井も高い方が音響的に良いのですが…)、奥行はヤマハC3サイズと同等クラスを所望していました。サイズはF183がありました。そして音色を変えずに音量を下げることの出来る4番目のペダルがオプションで付けられることを知り、このペダルに未知なる魅力を感じました。

極め付けは2021年のショパンコンクールで1位のリウ氏と3位のガルシア・ガルシア氏がファツィオリを使用し、スタインウェイより総合的に上位に立ったことです(1.3.5位にファツィオリが、2.4位にスタインウェイが、2.6位にシゲルカワイが使用されていました)

これは演奏者の実力や審査員の好みもあり絶対的な優位性とは言えないですが、世界最大のコンクールで出た結果の1つとしては非常に興味深いものでした。

当時の調律師の方がファツィオリ・ジャパンの社長と知り合いだったこともあり特別に見積もりを送付していただいたので(とはいえ価格が8桁なので)じっくり資金を貯めて購入をしたいと考えるようになりました。しかしこの資金の壁がやはり大きく、今通っているほとんどの生徒さんたちが通ってる間に購入し弾かせてあげるのは難しいだろうというのが気になる点でした。

ファツィオリは中古ではほとんど出回らないですし、たまに出てきても私が欲しいF183の4番ペダルが出回る可能性は皆無な上、すぐに売れてしまいます。ピアノで生計を立てている私には経済的な面から見てもあまり合理的ではない旨を理解しており、ファツィオリは目標に掲げつつ色々なサイトで他のピアノも見ておりました。そんな折、非常に目を引くピアノをなんとメルカリで見つけました。そのピアノにはこのような文が添えられていました。

こちらはヴィンテージスタインウェイと呼ばれる古いスタインウェイに添えられていた説明です。まず、文才が素晴らしい(笑)そして私の求めていたサイズであり、ピアノを演奏し教える立場でありながら知らない会社が沢山出てきたことに興味を持ちました!

ヘラー、アベル、レンナー、ディアマント…これらは全てピアノ部品の製造会社です。調律師の間では当たり前のこれらの社名が私には何か「凄い部材を使ってるぞ!」と訴えかけられたようでとても衝撃でした。更に100年近く経つピアノ、通常の中古スタインウェイの相場よりもかなり抑えられた価格…

こんなに年月が経っているスタインウェイってどうなんだろう?という疑問が強くあり色々検索してみたところ「スタインウェイとニュースタインウェイ」という本に辿り着きました。

この画像は後日、私が購入して撮ったものでまた別のブログで紹介しますが、検索した時に内容が一部載っており本当に良いスタインウェイはヴィンテージにあるという確信を持つようになりました。まずはメルカリの売主の方に連絡をして現物を見せてもらおうとしたところ、メルカリに出ていたピアノは既に直売で売れてしまっていたこと、メルカリでの売主とピアノのオーナーは別人で、オーナーはピアノ工房を経営している方だと知り、他にニューヨークスタインウェイのヴィンテージピアノが2台あることを告げられ、それらのピアノの音を確かめたく直接ピアノ工房へ伺うことになりました。とはいえ以前某楽器店で100年前のスタインウェイを数台試弾した時はそんなに魅力を感じなかったのであまり期待はせず、しかし万が一、超魅力的なピアノに出会った時に備えて音大時代の仲間の若杉友恵さん(私の代のピアノ科首席)と細田優花さん(私と同じく田代慎之介先生門下の凄腕ピアニスト)に同行を依頼しました。幸いにもお二方とも町田から近くに住んでいたこともあり快諾、2022年6月29日に町田の藤本ピアノ工房さんに伺いました。